2025年度
理 事 長 所 信
スローガン
未来を創る側になろう
はじめに
13年前、私は家業を継ぐべく地元福井に戻り、印章彫刻士の国家資格を取得するための修行に意気込み、充実した日々を過ごしていました。ところが、その年の末、経営コンサルタントとして成果を上げていた弟から、「経営者の椅子を狙っているのは兄貴だけではない」と言われ、常識が揺らいだ瞬間を今でも鮮明に覚えています。あの頃の私は、敷かれたレールを歩いているくせに、自分という小さな枠の中で必死にもがいては、それを誰かのせいにするような傲慢な人間でした。そして、そんな私を「誰かが変えてくれるのを待つのではなく、自らの力で変えていく」という思考に変えてくれたのが青年会議所でした。
入会2年目の京都会議で、当時の理事長から「小林くんはいずれ理事長になる男だから、メンバー全員と話しておくといい」という一言をもらいました。その一言を素直に受け止めた私は、福井に戻ってすぐに将来の夢として理事長になることを社内で発表しました。ところが、両親から猛反対をされ、とても悔しい思いをしました。それをバネに、仕事とJC活動の両立を前提に、青年会議所では少し背伸びをした役職を担うことで、得られた経験や学んだスキルを自社でも応用する、ということを10年以上かけて実践し、信頼を得てきました。そして今回、巡ってきたチャンスに対して自らの意思で理事長という役職を掴み取る覚悟を決めました。
力強いムーブメントを創造しよう
想像してください。私たちのまちは、今、大きな転換点に立たされています。効果的なPR不足による観光客の減少や働き手の不足、若者の流出といった課題が進行する中で、もし今行動を起こさなければ、このまちの未来はどうなってしまうのでしょうか。私たち一人ひとりが、このまちの小さな歯車として動き出さなければ、どれだけ努力してもムーブメントは生まれず、未来への進行は止まり、状況は悪くなっていく一方です。しかも、今目の前にある課題を解決していくだけでは、迫りくる未来の課題に対しての準備不足となり、手遅れになりかねません。だからこそ、私たち鯖江青年会議所は、理想の未来を描きバックキャスティングして課題を解決できる人材、言わばこのまちの人たちから一目置かれる『未来を創る側』であることを再認識し、10年後ではなく近い将来『未来を創る側』になる人材を育成していく必要があります。また、市民のベクトルを合わせて連携することでインパクトのある発信を行い、さらには、『未来を創る側』が起こすムーブメントを持続的に広げていくために、市民をムーブメントの輪に巻き込んでいく必要があります。
未来を創るのは、他の誰でもない、私たち自身です。時は平等に流れますが、未来を創るための時間は限られています。「誰かが変えてくれる」と、1秒先の未来を、ただ待つのではなく、自らの意思で創り出す側になりましょう。それが、このまちを発展させ、次世代に受け継ぐための第一歩になります。
未来を創る側の育成
まちにムーブメントを起こすのは人であり、その人を育てるのが育成の目的です。これまで鯖江青年会議所の育成事業は、主に10代前半の子供たちを対象に、「郷土愛」や「思いやりの心」などを育む事業を行ってきました。しかしながら、少子化や若者の県外流出が進行している中で、当事者意識を持ってこのまちにムーブメントを起こす「未来を創る側」になり得る層が急速に減少し、地域の未来を担う人材の不足が深刻な問題となっています。また、10年後の「未来を創る側」を育成しようとしても、それでは遅すぎる可能性があります。将来の地域の持続可能性を確保するためには、今すぐに「未来を創る側」の育成を開始する必要があります。
そこで今年度は、近い将来に「未来を創る側」となり得るプレ社会人を対象に、「私が関わった」、「やってよかった」という、生涯忘れられないような原体験を提供する育成事業を実施します。当事業では、若者たちが主体となって地域の課題に向き合う経験や、地域社会との結びつきを感じる機会を提供します。彼らが実際に地域の問題に向き合い、解決に向けたアクションを起こすことで、自らの成長を実感し、「未来を創る側」としての自覚を持つことを目指します。
最終的なゴールは、若者たちが「いつか未来を創る側になりたい」と感じ、さらに今後も「鯖江青年会議所の活動や運動に参加したい」と思えるようになることです。
市民連携と発信
鯖江市や越前町の地域の魅力は多岐にわたりますが、有名な産業や観光スポット、イベントが大きく取り上げられがちです。一方で、実際に住み暮らす人たちが感じている日常の中にある魅力や市民の手で新しく作り上げた魅力に対しての発信は、個別の取り組みが多く、統一感に欠けているため、地域全体としてのインパクトが十分に発揮されていないのが現状です。
そこで、鯖江市制70周年を迎える今年度のまちづくり運動では、地方創生の名のごとく、市民が団体や業種という枠に囚われずに連携して、例えば同じ日に同じ場所で同じ内容を統一したテーマで発信することによって、インパクトをもたらすことを目指します。
最終的なゴールは、市民が連携して発信した運動の輪が広がり、地域内外で話題になること、携わったことでムーブメントの輪に加わり、共に進む一員であることを実感してもらうことです。
輪を広げる会員拡大
今から3年後には約15名の会員が卒業することになり、会員拡大を全く行わない場合、今の半分ほどの会員数でこの組織を運営していく未来が待っています。そうなれば、これまでのような活動や大きな規模の事業を行うことが難しくなります。とはいえ、青年会議所の会員数は全国的にみても減少の一途をたどっており、これまでと違った工夫が求められます。
そこで今年度の会員拡大では、従来の候補者に加え、事業を通じて関わりを持った人たちも会員拡大の対象者として声掛けを行っていきます。また、今後も持続的に大きな規模の事業を展開していくための足掛かりとして、未来を創る側の輪を広げていく活動を展開します。例えば、将来的にリーダーシップを発揮できる人材の発掘を意識しつつ、鯖江青年会議所の会員ではなくても「未来を創る側」の一員として積極的に鯖江青年会議所の活動や運動に関わることができるような仕組みを構築します。そのことにより、「JCが主導している活動」から「地域全体で取り組んでいる運動」 という認識が生まれ、市民からの共感が得やすくなります。また、運動に参加してもらうことで鯖江JCへの興味や関心、理解が深まり、会員候補の拡大にもつながると確信しています。
最終的なゴールは、10名以上の新たな会員を拡大し、青年会議所の会員でなくても「未来を創る側」の一員として参加できる仕組を構築して持続的にメンバーを追加していくことで、組織全体の活力を維持・向上させることです。
このまちの人たちから一目置かれるJAYCEEとしての、会員研修
JC活動や運動を通して、市民やプレ社会人と関わっていくうえで、鯖江青年会議所への期待を高めてもらうためには、個々のメンバーの見られ方や行動が、鯖江青年会議所を形作っているという自覚を持つことで未来を創る側として一目置かれる存在であることが求められます。
これまで、鯖江青年会議所では、先輩の後ろ姿を見てメンバー成長していく組織文化がありましたが、組織の持続的な発展には、誰が見ても理解できる形式知と、先輩たちの経験や勘が元になっていて言語化することが難しい暗黙知の両方をバランスよく伝授していくことが欠かせません。
そこで今年度の会員研修では、メンバーが未来を創る側として必要な知識やスキル、社会課題を解決するというJCの本質を形式知で学びます。また、交流を通じてベテランメンバーの暗黙知を若手メンバーに伝授することで、当事者意識を育み、JCを語れるメンバーになるためのプログラムを実施します。
この研修のゴールは、未来を創る側としてのメンバーがこのまちの人たちから「あの人が言うならやってみよう」「あの人がいるからやってみよう」と一目置かれる存在となり、結果的に鯖江青年会議所の価値を高めることです。
最高の土壌を作る事務局運営
季節ごとに咲く花が美しく咲き誇れるのは、最高の土壌が整っているからであり、年間を通して充実した活動やインパクトのある運動を展開していくためにも、最高の土壌となる運営が必要です。最高の土壌とは、どんなに強い風や雨が降った時も、美しい花を咲かせられる環境を整えられることです。
事務局は、日々の活動や例・総会、理事会などを円滑に進行させるための調整役として、抜けのない出欠確認、会議や例総会の事前準備、会議前の資料確認と不備の調整による理事会などの会議時間の効率化、宿泊先の事前予約や懇親会の会場選定など、その全ての設えにおいて、最高といえる土壌を作ることで、鯖江青年会議所が未来を創る側としての最大限のパフォーマンスを発揮できる組織運営をしていきましょう。また、例会の出席を前提としつつも、アテンダンスの活用を積極的に推奨することで、例会の出席率向上に努めます。
事務局の最終的なゴールは、鯖江青年会議所が組織として最大限のパフォーマンスを発揮し、未来を創る側としての役割を効果的に果たせるようにすることです。
出向者への協力と経験の伝播
出向に対してどのようなイメージを持っていますか?慣れないメンバーと事業を構築していくことや、県内各10 LOMを回ること、厳格な会議などを思い浮かべて負担と思うメンバーが多いのではないでしょうか。事実、私もそのように感じていた一人でした。
しかし、2024年に副会長として福井ブロック協議会に出向したことで、抱いていたイメージは逆転しました。「鯖江青年会議所を代表して出向していること」、「背負うものがあること」がこんなにも自分を強くしてくれ、成長させてくれるとは思ってもみませんでした。自身の価値観を大きく広げてくれるメンバーとの出会いがあり切磋琢磨する経験は何事にも代えがたい経験となりました。
また、出向したメンバーがその経験をLOMに持ち帰ることで、LOMの成長につながると確信しています。とはいえ、出向先での行動や計画はLOMメンバーには見えにくく、孤立してしまいがちで、出向者の経験をLOMメンバーに伝播出来ているとは言い難い状況です。そこで、出向者が得た知識や経験を、定期的に例会や総会で鯖江青年会議所全体に報告する機会を設けます。また、今年度はブロック大会が鯖江の地で行われる為、出向を他人事と思わずに可能性を広げる機会として目を向ける一年にしましょう。具体的には、ブロック大会への参加はもちろんのこと、多くのメンバーでのお出迎え、懇親会アトラクションの設営を積極的にフォローしましょう。
おわりに
舗装された道を選んで歩いていくだけ。そんな日々から抜け出すことができたのは、青年会議所に入会する決断をしたからです。巻き起こっている全てのことを真っすぐに受け止める勇気を持てたのは、何度も何度も壁を乗り越える経験をしてきたからです。「もうダメだ」と心が折れそうな時も、「まだやれる」と次の一歩を踏み出せたのは、この足音を聞いてくれている仲間がいると思えたからです。青年会議所には、あなたが想像するよりも、もっと大きなはずのあなたと出会うための成長の機会があります。
改めて想像してください。私たちが今ここで行動を起こすことで、5年後、10年後にどんなまちになっているのかを。活気あふれる商店街、子供たちの笑顔が溢れる公園、新しい事業や文化が次々と生まれる地域。このまちの人たちから一目置かれる存在になった私たちが起点となって広げていく「未来を創る側」の輪が、このまちを変える原動力となり、やがて大きな成果をもたらします。私たちが共に創り上げる未来は、きっと次の世代にも誇りを持って受け継がれていくでしょう。
スローガン
未来を創る側になろう
基本方針
一、 このまちの人たちから一目置かれる鯖江JCに
一、 近い将来、未来を創る側になる人材の育成
一、 市民連携によるベクトルを合わせた発信
一、 10名以上の会員拡大
一、 持続可能なJCパートナーの構築と拡大
一、 JCの本質を理解し、自分の言葉でJCを語れるJAYCEEとしての会員研修
一、 最高の土壌を作る事務局運営
一、 出向者への協力と経験の伝播
一、 100%例会の達成
一、 JC運動の検証と継承